110. 尾州(一宮)で生地ができるまで〜第7話〜
2022年08月01日
今回は生地ができるシリーズ最後になる整理加工についてお話しさせて頂きます。
この整理加工が良い生地を作る上で、とてもとても大切な工程になります。
整理加工はスッピンの織りあがった生地に化粧をして、美しい生地に仕上げる工程になります。
特にスーツ生地は表面を毛焼きしたり、プレス機械で押さえたりすることで、艶がのります。
原料が良いと、あまり押さえずとも艶がのります。
なので、光沢感を出そうと思えば整理加工である程度自由に出すことは可能になります。
だったら安価な原料で、作って整理加工で光沢感を出せばいいと思うかもしれませんが、上質な原料のツヤは整理加工で表現できないなんとも上品なツヤが出ます。
どうしてもプレスで押さえてしまうと、生地の膨らみがなくなり、ペタって薄っペラい生地になってしまいます。
立体感がない生地で仕立てると、あまり仕立てが映えません。
これは本当に大きな差ではないのですが、服にしてみるとなんとなく分かります。
因みに上の写真は、上質なウールを使って仕上げたスーツ生地になります。
上の2枚の写真はスーツ生地ではなくカジュアルの生地になります。
この生地は尾州で仕事を始めた時、整理を通すことで、ここまで変わるかと驚いた生地です。
ウールは洗うと糸同士が絡み合い、縮んでいきます。特に糸が細くなればなるほど縮みやすくなります。
その原理を利用したのが、上の写真になります。
左の写真は整理前で隙間が開いており、糸の一本一本がはっきりと分かります。
右の写真は整理後で、極限まで縮めることで、写真のような表情になります。
この生地は整理で急激に縮めているので、生地に膨らみがあり、多くの空気を含みやすくなるので、軽くて非常に暖かい生地になります。
機能性は最高ですが、毛玉ができやすいデメリットありますが、それも風合いです。笑
完璧な生地は存在しないのです。
スーツ生地に比べてカジュアルの方が、整理工程の選択肢が凄く多いです。
カジュアルは特に整理工程が重要になってきます。
N tailor designのオリジナル生地は色々な整理工程をしているので、興味がある生地等ございましたらお気軽にお問い合わせくださいませ。
今回で尾州で生地ができるまでシリーズは最後になりますが、糸から生地にするまで色々な工程があります。
今回取り上げていないですが、撚糸工程も生地によっては入ることがあります。
生地ができるまで、たくさんの人が関わって尾州で生地ができることを知って頂けたら、大変嬉しく思います!!